これまで相談のあった内容の中からよくある相談内容をまとめました。
電話相談から(Q&A)
- ウイルス性胃腸炎と「おなかの風邪」は違う病気ですか?
- 同じ病気です。ウイルスが胃腸に入り込んで、胃腸の働きを悪くするために、急に吐き出したり、下痢をしたりします。ウイルス性胃腸炎は「おなかのかぜ」「はきくだし」「嘔吐下痢症」など、様々な呼び方で呼ばれています。ロタウイルス・アデノウイルス・ノロウイルスなどが有名です。
- ウイルス性胃腸炎ってどんな病気? 症状は?
- 症状は、突然の嘔吐で始まり、約1日位はムカムカが続きます。嘔吐には、2通りのパターンがあって、半日くらいの間に何回も嘔吐を繰り返すことが多いのですが、1日1~2回くらいの嘔吐が2~3日続くこともあります。嘔吐に続いて下痢が見られることが多く、3、4日~1週間位続きます。赤ちゃんでは、下痢が長びくこともあります。ロタウイルスの場合酸っぱい臭いのクリーム色~白色をした下痢が見られ、だんだん水のような下痢になります。発熱はあまり見られませんが、時に高熱を伴うこともあります。
- ウイルス性胃腸炎の原因は?どうやってうつるの?
- 原因はロタウイルス、アデノウイルス、ノロウイルスなどがあります。
感染経路は
・人から人への感染…感染者の嘔吐物や便を触った手やその手で触れた物を介して口に入り感染する。また、嘔吐物が乾燥し、そこからウイルスが飛散しそのウイルスを吸い込み感染する場合もある。
・汚染された水や食品からの感染…食品からの感染で多いのは貝類による物で、汚染された二枚貝を生や加熱が不十分なまま食べることで感染する。
- どうして嘔吐するの?
- 一回に飲んだり食べたりする量が、現在のお腹の大きさ(消化吸収能力)を超えてしまうからです。元気な時の胃腸の消化吸収能力を「どんぶり一杯」とすると、ウイルス性胃腸炎になった時はウイルスの作用で胃腸の働きが悪くなるため、消化吸収能力が「おちょこ一杯」位にまで小さくなっています。小さくなったお腹の受け皿に対して、多くの食べ物や飲み物が入ると、器からこぼれるように、嘔吐したり、下痢をしたりします。
- ウイルス性胃腸炎の治療方法は?予防接種はあるの?
- 特別な治療方法はありません。治療の中心は、脱水を防ぐためのこまめな水分補給、安静、整腸剤内服などの対症療法となります。
ロタウイルスのみ予防接種があります。定期接種として生後6週0日後から接種を受けることができますが、接種期間が短く限られているので、タイミングを逃さないようかかりつけ医とよく相談してください。
- 嘔吐したときの応急手当(水分)
- 嘔吐した直後は飲んだり食べたりせずに胃腸を休め、寝かせてあげると良いでしょう。吐き気がなくなれば(1時間後くらいがめやす)、1回5㏄程度(スプーン1杯程度)の量を10~15分間隔で水分補給しましょう。
「少量頻回」の方法で行っていても嘔吐する場合は、吐き気止めの坐薬を使ってみましょう。座薬を入れてから30分から1時間は「飲まない、食べない」、時間がたてば「少量頻回」を行ってみましょう。
- 水分摂取はなぜ「少量頻回」?
- 例えば50ccの水分をとった直後に再び嘔吐した場合、嘔吐する量は、胃液も失われるので飲んだ量以上になります。水分を補給するつもりが、反対に水分を失ってしまうことになるのです。短時間に「飲んでは、嘔吐」を繰り返してしまうと、脱水状態が更に強くなります。お子さんにちょっとだけ「がまん」をしてもらうのは、「飲んでは、嘔吐」を繰り返さないようにするためです。したがって、夜中に数回嘔吐した場合も眠れるようなら無理やり水分をとらせず、そのまま朝まで寝かせてあげた方が良い場合もあります。
- 嘔吐したときの応急手当(食事)
- 水分をいくら飲んでも吐かなくなれば、お米(お粥)、パン、うどんなどの穀類から始めましょう。穀類は体のエネルギーとなり疲れやだるさを取ります。お肉・野菜はもう少ししてから始めましょう。お子さんは意外とお粥を好まない方が多いので、パン粥(お鍋に牛乳、砂糖、パンを入れて一煮立したもの)やうどんをいつもより柔らかく煮るなど、お勧めです。但し、食べられるようになっても、胃腸の働きは100%までには回復していませんから、少量ずつ始めましょう。
- 経口補水液とは何ですか?
- 体内で失われた水分や塩分などを速やかに補給できるように成分を調整した飲み物。腸内で水分や塩分が効率よく速やかに吸収されるように、ぶどう糖などの炭水化物とナトリウムなどの電解質の濃度が調整されています。経口補水液には、「経口補液水OS-1]、「アクアライトORS」(普通のアクアライトではありません)などがあります。軽度の脱水症で口から水分が摂れる時は、点滴よりも経口補水液の方が効果的で安全,便利,かつ安価であると再び有用性が見直されています。
- 母乳を与えてもよいですか?粉ミルクは薄めた方がよいですか
- ・母乳は飲ませてもらって大丈夫です。但し、嘔吐した直後はお腹を休める必要があるため1~2時間は授乳を控えましょう。母乳自体は胃腸には良いのですが、母乳は一回に飲む量が調節しづらいのが難点です。1回の授乳時間を短めにする、搾乳して少しずつ与えるなどの工夫が必要でしょう。
・粉ミルクの濃さはいつも通りでよいですが、この時も1回のミルク量は少なめにしておきましょう。
- お腹を休め、「少量頻回」に水分を与えても吐いてしまう場合は?
- 少量頻回の水分摂取を行っても嘔吐が続く時は、ご自宅で我慢しないで医療機関を受診しましょう。
- 感染予防のポイントは?
- 症状がある間の入浴はシャワーのみにするか、最後に浴槽に入るようにしましょう。
また、症状がなくなってからも感染後2週間程度は便にウイルスが排出されていますので、症状が落ち着いてからも、手洗いをしっかり行いましょう。
手洗い
・日頃から調理前後・食事前・トイレの後などに、石けんを使って、流水で手をしっかりと洗う。(液体石けんが推奨されています)
・手洗い後のタオルは共用せず、個人用タオルかペーパータオルを使用する
食中毒の予防
・カキなどの二枚貝は、中心部まで十分に加熱する。湯通し程度では、ウイルスは死滅しません。特に高齢者や乳幼児では注意!!
・貝類を調理したまな板や包丁は、すぐに熱湯消毒する。
・野菜、果物などの生鮮食品は、水道水で十分に洗う。
・調理する際、食事の前、トイレの後には、よく手を洗う。
嘔吐物・便の処理
・ウイルスによる感染性胃腸炎では、感染している人の嘔吐物、便から感染します。嘔吐物が乾燥するとウイルスが容易に空中に漂い、その飛沫(ウイルスを含んだ小さな水滴、1~2m程度飛散)をわずかでも吸い込むことで感染するため、嘔吐物を処理する際には次の「3原則」①すばやく処理する ②乾燥させない ③消毒する を守りましょう。
- 嘔吐物や便の処理方法や汚れた衣類のより方法は?
- かたづけ終わるまでは、なるべく他の人にうつさないようにその場から遠ざけましょう。
または、少なくとも3m以内に近づかないようにすることが必要です。
[準備] ①処理する人はできるだけ使い捨てマスク、使い捨て手袋を着けましょう。
②消毒剤:次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系消毒剤や家庭用塩素系漂白剤
拭き取り:雑巾(古布、古新聞など)、大きめのビニール製ゴミ袋
[手順] ①便や嘔吐物の上に、ぼろ布やペーパータオルをかぶせ、汚染場所を広げないよう、
中心に向かって拭きとりましょう。(吐物中心に半径2M)
②拭き取り後、50倍(水500m塩素系漂白剤(ハイター等)10ml)に薄めた塩素系
漂白剤で浸すように床を拭き取り、その後、水拭きしましょう。
③全てをビニール袋に入れ、口をしばって捨てる。
(ビニール袋に廃棄物が十分浸る量の50倍(水500m塩素系漂白剤
(キッチンハイター等)10ml)に薄めた塩素系漂白剤を入れるのが望ましい)
★便や嘔吐物を乾燥させないことが重要。できるだけ早く処理をし、
窓を開けるなど換気を十分にし、しっかり手洗い・うがいをしましょう!★
※汚染した服
→50倍(水500ml塩素系漂白剤10ml)に薄めた塩素系漂白剤に30分漬け込む。
もしくは、85度以上1分以上の熱水洗濯を行う。
※布団、カーペットなど洗濯ができないもの
→便や嘔吐物を取り除き、スチームアイロンで当て布をして85℃以上1分以上加熱
※トイレのドアノブなど、金属部分
→250倍(水500ml塩素系漂白剤2ml)に薄めた塩素系漂白剤で拭いた後、
腐食しないように30分程度おいた後で水拭きを行いましょう。
- ウイルスの検査は必要ですか?
- あまり必要はありません。なぜなら、嘔吐や下痢の原因がノロウイルスでも、アデノウイルスでも、ロタウイルスでも、治療方針は変わりませんし、特効薬もないからです。
ウイルス性胃腸炎に限らず、小児科では治療方針を変える可能性が低いと考えられる
検査は、お子さんに負担がかかるので積極的には行いません。
インフルエンザや溶連菌感染症など、検査の結果で治療薬が変わる病気については、
お子さんに負担がかかっても検査することをお勧めします。